すごい。本当にすごい。
大賞受賞は宝塚出身女優の中で初めてなのではないでしょうか。
読売演劇大賞 望海風斗さん
「マスタークラス」「エリザベート」の演技において
私の勝手な想像なんですけど、今回の受賞は「マスタークラス」と「エリザベートの」演技への評価でしたが、圧倒的に「マスタークラス」の評価が高かったのではないかと思うのです。
「エリザベート」が素晴らしいのは言うに及ばずですが、「マスタークラス」は何と言ってもストレートプレイです。
「望海風斗=歌」という方程式を覆し、純粋に望海さんの「演技力」が高く評価されたということですよね。これはかなり凄い。
「マスタークラス」という作品で、望海さんはマリア・カラスを演じました。
マリアがニューヨークのジュリアード音楽院で実際に行っていた授業「マスタークラス」を再現した作品です。
初演は30年前、黒柳徹子さんが演じておられました。そもそも徹子さんがニューヨークでこの作品を観て衝撃を受け、自ら日本の演出家に売り込んで初演にこぎつけたという逸話があります。
望海さんのこの作品、幸い私は観劇出来たのですが、正直観る前は「望さまなのに歌ないのかー。歌が聞きたいのになー」と思いながら劇場に向かっておりました。
同じ様なファンが多かったのではないかな。「望海風斗がマリア・カラスを演じる」という事以外、「マスタークラス」という作品が一体どういう作品なのか全く知りませんでしたし、「歌わない望海風斗」を見たことがないヅカオタとしては、望さまが一体どうなっちゃうのか、どちらかといえば不安な気持ちで劇場に足を向けました。
結果、頭をガツンと殴られたような衝撃…!
望海風斗の底力に恐ろしささえ感じたほど。
舞台に出てきた瞬間から劇場の空気が変わり、マリア・カラスそのものの彼女がそこにいました。
出演者は6人だけ。大掛かりなセットも照明もなし。
望海さんは舞台にほぼ出ずっぱり。1人で話し続けます。その膨大なセリフ量にまず驚きます。しかもちょっと早口なのに全く噛みません。(当たり前か。役者さんて本当に凄いですね)
観客もマリアの授業を観覧している設定で進められますので、望海さん演じるマリアが時々観客に向かって話しかける事があり、どんどん授業に引き込まれていきます。
オペラを学ぶ生徒達(みなさん素晴らしい歌声でした)が順に1人ずつマリアの前に出て歌い、時には厳しく、いや、終始、厳しい授業が進められます。
マリア・カラスは20世紀を代表するディーバですが、そこに至るまで、自分自身のコンプレックスと闘いながら自分を磨き続けました。
ですから生徒たちにも中途半端な態度や気持ちで音楽に向き合うことを一切許しません。
彼女にとっては、音楽や芸術に向き合うという事は、人生と向き合う事と同義です。
マリアが生徒に投げかける言葉一つ一つが、観客である我々の胸にも突き刺さります。
そして何と言っても圧巻だったのが、海運王オナシスとマリアの悲劇的な恋を、望海さんが一人二役で演じる場面。鳥肌ものでした。
オナシスのしたたかさ、傲慢さ、身勝手さを、男役の経験を存分に活かし、リアルに演じます。
そして、彼にすがる哀れなマリア。絶望、恍惚、恨み、苦しみ…愛する人に拒絶されるマリアの心はぐちゃぐちゃに切り裂かれ、泣き叫び、心は彷徨い続けます。
そんな2人のヒリヒリとしたやりとりを、望海さんが全身全霊で演じます。
恋を知っている全ての大人にとって、正視するのさえしんどい、そんな場面です。
正直、こんな恋をしたら身が持たないな…と思いました。
静かに進められる授業シーンから一転しての、この一人二役の場面。
望海さんの集中力、気迫に圧倒されます。
教壇に立つ凛としたマリアから、ただの1人の恋する若い女性のマリアへの切り替え。今まで見たことのない役者・望海風斗の姿に鳥肌が立つと同時に、感動を覚えました。
オペラの発声については、かなりトレーニングされたとご本人が仰っていましたが、イタリア語の発声などとても綺麗に聞こえましたし、生徒のためにほんの一節歌うオペラの美しいこと…さすが望海風斗と言わせていただきたい。
観劇後すぐに、もう一度見たい!と思いましたが、地方公演まで行く都合がつかず、結局1度しか観られませんでした。
きっと再演がかかると信じておりますので、その時は必ずまた観に行きたい。絶対行きたい。
そう思わせてくれる忘れられない作品となりました。
最後に一つ。望さまに謝りたく。
「歌のないお芝居に出る望海風斗」に、ほんのちょっとだけでも不安を抱いてしまった事、伏してお詫び申し上げます。望さまの可能性を一番信じるべきはファンなのに…!
これからも応援し続けますので、許してください!!
追記:読売演劇大賞授賞式会場での「私だけに」の歌唱、素晴らしかった‥!未見の方は読売演劇大賞の公式YouTubeで見られますので是非。
